2020年05月27日

昭和新山の生き物5

23.
110年を過ぎた明治新山(通称四十三山よそみやま100年前は標高296m)のトレッキングコースである。潜在ドームの収縮で40mも低くなり、今は海抜252m、湖畔からの標高差は約170mである。日陰で生きるシダ植物、オオウバユリが見える。45個の火口が開いたが、トレッキングコースはその縁を通る。イタヤカエデ、エゾヤマザクラ、カツラ、シラカバ、ドロノキ、ハリギリ、ミズナラなどが覆っている。
23明治新山トレッキングコース

24.
60年が過ぎた頃の昭和新山である。正面に噴気する蒸気が見える。「南西」斜面、ワカサリゾート鰍フロープウエイがある側で、幹の太さは随分細い。
24昭和新山

25.
入口ゲートから100mあたりの道沿いのハリギリである。トゲがあるがトゲではなく「芽鱗」(がりん)という。背が低かったころの枝がトゲのようになったという。
25昭和新山ハリギリ

26.
オニグルミにも芽鱗がある。冬を越す芽を守る外套である(茶色の部分が1年間22cm伸びた枝)。芽鱗はそれなりの役割を持っているが、ハリギリの「芽鱗」はどんな理由で名付けたのか知りたいものである。
26オニグルミ芽鱗

27.
ゲートから進むと、約150mで標高240m通称「珊瑚岩下展望台」に出る。トゲのあるニセアカシアやノイバラが多い。トゲは、草食動物に食べられないようにするための防御の組織だ。乾燥していく環境の変化に生き残りをかけたのだろう。
27昭和新山ニセアカシア・ノイバラ

28.
最近、地球温暖化が進む中で、爆弾低気圧が通過するようになった。ミズナラの幹をへし折った。周辺で最大のミズナラは胸高直径46cmだが、これは強風を耐え抜いた。
28昭和新山ミズナラ

29.
1964年(昭和39年)、伊達高科学部が昭和新山の植物調査を行ったそのレポートの断面図である。植物調査の記録は、貴重な財産として残り称賛されている。

東西断面図をみると、Aドームは西寄りに現れている。
29昭和新山断面図

30.
昭和新山「北東斜面」である。しかも標高差は約200m。隆起によって縦に出来た無数の亀裂があり、急斜面、ノコギリ歯の上を登るようで危険である。落石もある。エゾシカの「けもの道」が安全である。※入山には許可が必要です。
30昭和新山 北東斜面

31.
「北東斜面」の樹は幹が太い。屋根棚に降った雨や霧は吸収され、「北東斜面」の裾野に湧き出る。小川が流れトクサの群落があるのも「北東斜面」である。
31北東斜面

※パンデミック下、一旦、お休みし、次回は『河口と海岸をめぐって』をお送りいたします。

posted by 忍ちゃん at 14:48| Comment(0) | 昭和新山の生き物

2020年04月25日

昭和新山の生き物4 昭和新山の植生研究

18.
2019年11月、昭和新山植生の研究者・春木雅寛氏(北大総合博物館 研究員)を招き、一年を振り返る検討会を行った。春木氏は「新しい土壌観」を提唱していて、火山マイスター「植物調査」グループは、調査前にこの内容を学び、「植種の確認と、火山と植生の関係」を視野に予備的な調査として進めたのである。
18昭和新山植生の研究者・春木雅寛氏

19.
昭和新山駐車場の管理人さんの間で、標高370m前後の壁に立つ2本の樹が話題となっていた。「土産店に入る綿のようなものはドロノキのもので、それが風に乗って飛んでいき、あそこで発芽したんです」と問われて応えると、「最近、急に緑が多くなってきた」と乗ってくる。「火山灰には窒素、リン、カリが豊富にある、がっちり根を下ろしてデカくなった、森の始まりが始まったんです。あれは開拓者、パイオニアですよ」と言うと、「すごいですね〜」と、その凄さを喜んでいた。
19昭和新山ドロノキ

20.
高校教科書には「岩石(母岩)が物理化学的に風化して生じた砂や粘土に、生物由来の有機物(腐食)が混じり、土ができ、森林植物が出来る」と記述されている。昭和新山は、砂や粘土ができる前に根を下ろし、火山灰に含まれる無機態窒素(アンモニウムイオン、硝酸イオンなど)や、可給態リン酸(リン酸イオン カルシウムイオン、鉄イオンと結合し植物が吸収する)を吸収し成長するのである。日本は火山の島、森林への遷移を画一化すべきではないと思う。
20昭和新山のみどり

21.
2000年噴火から20年経った西山火口を「新しい土壌観」で見ると次のようなことが言えるのではないか。
『物理化学的に風化して生じた砂や粘土』ができたのではない。すぐそばの火口から噴出した火山灰が積もり、風で運ばれる植物の種子が、その火口縁で発芽したということである。』
カラマツ、シラカバ、ススキが観察できるからである。
21火山灰

22.
その火口縁にハリギリもある。ハリギリのタネは実の中にあるので風散布種ではなく動物散布種に区別されている。ここから南西約200mには噴気孔もある(2019年5月 98℃)。真冬であっても雪は解けている。エゾシカやキタキツネの足跡が雪の上に多数目撃できる。活発に動いている証しだ。また、渡り鳥も通過する。裸地からの遷移は、単純な道筋ではなさそうだ。
22火口縁のハリギリ

posted by 忍ちゃん at 17:26| Comment(0) | 昭和新山の生き物

2020年03月27日

昭和新山の生き物3 カラスのねぐら

11.
10年前、カラスの糞公害が北海道伊達市で社会問題化した。我が家の近くのお宅でカラスが巣をつくり、共働きで気が付くのが遅れ苦労したことがあった。親しみの中に好きになれない怖さを持ち、とは言え憎めない身近な生き物がカラスである。特に、クルミをくわえて飛び上がり、アスファルトに落す知恵の凄さを「トビオトシスキー作曲 クルミ割りカラス」などと褒められる不思議な動物である。
11カラス糞公害地図 伊達市

12.
日が西に傾くと、エサ場近くの見通しの良い高所に集まり、家族単位にねぐらに向かう。専門家は「智恵のついたつがい」が集団をリードするという。糞公害に悩まされる市民は、カラスの存在を疎ましく思いながらも、ねぐらの一つが昭和新山と聞くと目を丸くして驚くのである。
12国道で糞をまき散らすカラス

13.
昭和新山のどこから、いつ飛び出すのか、2010年の冬至、無人の駐車場で時を待つ変わり者(私)がいた。その時の記録である。

≪日の出7:03≫ 静まり返っている。
≪6:02≫トイレ横の樹でブトが警戒の声、呼応するかのように遠くの新山麓で2羽が鳴く。山に囲まれているので、ドームの中で聞くようで、近くにいるような、良く響く。6:10、新山麓で3〜4羽、お喋りのクワー、クワー、1〜2分続く。6:30、新山麓方面からクワー、クワーの鳴き声とともに、40〜50羽旋回しながら少しずつ長流川方向にずれながら高度を上げる。これに周辺のカラスが参加し旋回する。全体として100羽。先頭を切るのが2〜3羽いた。暗いのでシャッターが落ちない。≫

鳴き声は一部のカラスで、静かに風を切る翼の音が印象的だったという。
13 カラス昭和新山駐車場

14.
≪日の出6:32≫ 5:48、昭和新山の麓から「カー」という鳴き声が始まった。飛び出し6分間、「カー」と「カー」、時おり「ガー」の鳴き交わしが続きました。5:54、最初の飛び出しおこる。一千羽の半分程度のイメージ。しばらく旋回し、帯状になった後、長流川方面に移動していった(日の出38分前)。6:01、その時、最初の飛び出しよりも大きな音が昭和新山の麓で起き、カラス集団が飛び出してきました。その凄さに息を呑みました。一千羽以上のイメージです。長流川方面に行こうとしていた最初の集団の最後の方のカラスがUターンし、この集団に吸収されました。二つ、三つの集団に分かれながら合流し、また、別れ…の乱舞を繰り返しました(日の出31分前)。6:08、一部が帯状になり長流川方面に飛んで行きました。残った集団は旋回を繰り返し、次第に高度を下げてゆきました。6:10、高度を下げた集団は、ロープウエイ昭和新山駅の鉄塔とロープに着陸しました。この映像は、カメラにおさめましたが、全体としての数は、この写真に映った倍はあろうかと思います。≫
14昭和新山のカラスたち

15.
≪日の出6:25≫ 参加者4人。週末の「昭和新山、国際雪合戦大会」会場設営のために、ブルドーザー、トラックなどのエンジン音、ライトが煌々と付き、5:30の到着時には、第一回目のカラス集団の飛び出しが始まっていた。三浦和市さん(写真家)がカメラのセッティングを始めていたが、暗くて飛んでいるカラス集団を見つけることができなかった。5:35、第二回目の飛び出し。この時、木村益巳氏(「森ネット」代表)が到着しカメラを構えたが、飛んでいる様子がわからずチャンスを失った。とにかく鳴き声がないのである。5:40、第三の飛び出し。有珠に住む馬場賢一郎さん(野鳥の会)が到着した。今回の飛び出しは第四回まで続いた。この四回目は、すでに飛び出していた集団が、塒に帰り、再び大集団として飛び出すというパターンがあった。全体として、作業用のエンジン音と、明るいライトによって、カラス集団に落ち着きがなく、「大飛翔」という状況にはなかったが、全員『すごい!』と表現した。

ロープウエイに着陸したカラスを撮影しようと車を移動した。馬場賢一郎さんの観察では約700羽がいる、カラス全体の数は、「1000羽以上」が妥当であろうということになった。

ここでカラスが越冬するのは、昭和新山による暖かさが原因ではないかと話し合われた。
15昭和新山のカラス

16.
観光客で賑わう土産店の前の駐車場から坂をのぼると展望台があり、そこに木製のベンチがある。ねぐらに入る前に、このベンチにやって来たカラスがペリットをはき出した。形として残っているのは珍しい。
16カラスのペリット

17.
植物調査の火山マイスターがゲートから入ったのが3月13日(特別な許可が必要)。まだ、発芽はなく、見通しの利くけもの道が上に伸び、あたりは静まり返っていた。ゲートから100mもいかない所に、おびただしい白い糞がまき散らされてあった。カラスの糞である。ペリットも転がっている。専門家は常緑の針葉樹で夜を過ごすというが、無防備な落葉樹ドロノキ、ミズナラ、ハリギリで夜を過ごしている。安全で暖かな場所という “カラス文化”を受け継いでいるようである。
17カラスなぜ落葉樹で夜を過ごすのか

(つづく)

posted by 忍ちゃん at 15:33| Comment(0) | 昭和新山の生き物

2020年02月27日

昭和新山の生き物2 わからないことを楽しむ

(06) 観光客が訪れる展望台の近くにひときわ葉の大きなシラカバの肌に似た樹があった。芽吹きが遅く、芽吹くとあっという間に葉を大きくする。「ウダイカンバ」と専門家は言う。石を手に取り「シソキセキセキエイアンザンガン」と言われたことがあった。赤い昭和新山の石との違いに驚いて覚えた。「あれ、ウダイカンバだ」と葉のデカさが遠くからもわかるカバノキ科の一つである。
06ウダイカンバ 昭和新山

(07) 伊達高科学部は1964年調査を終え、昭和新山の「植物調査」報告書を発表した。噴火終息約19年後だ(1945年12月)。西山山麓2000年噴火後の今と重なる時期ということになる。つまり、西山山麓火口周辺を歩くということは、当時の伊達高校生の気分となるはずだ。
07伊達高校昭和新山調査

(08) 2000年噴火15年後の西山山麓火口である。オオイタドリ、アキグミ、シラカバ、ハンノキ、エゾノコンギク、ススキ、ヒメジョオン、アキメヒシバ、噴気孔は100℃、春には周辺にハハコグサがあった。
08西山山麓火口

(09) 伊達高科学部報告書に出てくる植物は以下の通りで、遷移図はそのうちの6種(オオイタドリ、シロツメクサ、スギナ、ホッスガヤ、ミヤコグサ、ヤナギ)。他に、フキ、オオマツヨイグサ、オオバヤナギ、スベリヒュー、ミヤマハンノキ、シラカバ、苔、イヌタデ、ウダイカンバ、アカザ、ドロノキ、ラクヨウがあった。ラクヨウはカラマツである。
09カラマツ 西山山麓

(10) 2000年噴火が起きた3月31日、火口から約600m南西に洞爺湖幼稚園があった。噴石と火山灰が降り注ぎ、直径1.3mの噴石も落下した。建物は破壊され、広い運動場も地殻変動で傾いた。ここに「植生回復観察エリア」が設けられている。アキグミ、シラカバ、ドロノキ、ノイバラ、アカツメクサ、アキタブキ、アマニュウ、オオハンゴンソウ(外来種)、オオヨモギ、スギナ、ススキ、シロツメクサ、ノラニンジン(外来種)がある。
10植生回復観察エリア有珠山噴火

(11) 昭和新山の入口ゲート前である。70年が過ぎ、多様な植物たちが待ち構えていた。すると専門家は「ドロ、ホオ、うわ〜、いっぱいある!」と私たちに言うのである。そして「あっ、ダイコンソウだ!」とも。火山マイスターにとっては、何が何だかわからない。わからないことを、楽しむしかないのである。
11昭和新山入り口ゲート

(つづく)

posted by 忍ちゃん at 14:09| Comment(0) | 昭和新山の生き物

2020年02月04日

昭和新山1 プロローグ

(01) 「畑の中から生まれた火山」「日本の国の特別天然記念物」「個人所有の火山」などと世界に知れわたった山を一目見ようと、今も、国内・外から多くの観光客が観光バスでやってくる。撮影場所は海抜約180mの駐車場。標高398m、高低差約210m、地下深くのマグマが顔を出した赤い山です。長い時間をかけ収縮し、数m低くなりました。
01畑の中から生まれた火山

(02) 70年以上たった昭和新山です。昔、修学旅行で見たという観光客は、異口同音に、「昔と変わらない」「緑はなかったはずだ」と言い、三松正夫氏がこの山を買い取った目的を、70年経った今の人々が表現してくれます。不確かな思い出に浸り懐かしみ、少年時代にタイムスリップさせてくれる山です。
0270年以上たった昭和新山

(03) この図は北海道伊達高等学校科学部(指導者・小松浩一教諭)らが、植生の回復として行った調査図をカラー化したものです。オオイタドリが、年とともに、少しずつ山頂に向かって生えあがっていく様子がわかります。
03オオイタドリ

(04) オオイタドリの雌です。生育し始めた昭和22年(1947年)頃から、伊達高科学部が調査を始め、1951年、1956年、1960年、1964年の4回にわたって記録しました。その熱意に頭が下がります。
04オオイタドリの雌

(05) 洞爺湖有珠火山マイスターらは、高校生のこの調査に元気づけられ、特別な許可をいただき、植物調査チームを編成し、これに地元の「NPO法人・森ネット」の専門家を加えた調査を始めました。
05昭和新山植物調査チーム

(つづく)

posted by 忍ちゃん at 14:22| Comment(0) | 昭和新山の生き物